『私の提言』連合論文募集

第5回入賞論文集
佳作賞

侵されない職場
-モラル・ハラスメントの撲滅にむけて-

千頭 洋一
(UIゼンセン同盟 労働条件局)

見えにくい攻撃
 私は約20年前に大手総合スーパーに入社し、東京都下の小型店の婦人衣料の担当になった。当時はバブル景気の時期でもあり、私の会社も最高益を更新していた。入社1年半後に店長が替わった。普通規模の店であれば、店長と入社数年の担当者が会話をする機会はあまり無いのだが、この店には正社員が十数名しかおらず、店長も婦人衣料出身であり、直接指導を受けることが多かった。
 私の担当部門の業績が悪かったせいもあり、次第にこの指導の時間が長くなっていった。ただ、その内容は店長の十数年前の経験であったり、当時の会社の方針とずれていることも多く、かなり嫌味な言い方もされるので共感できなかった。そして、毎日のように売場レイアウトがおかしいので変更するように指示された。確かにレイアウトをその時期に応じた適正なかたちに変更していくことは、重要なことである。ただ、死筋商品1を排除して売筋商品2の仕入れを拡大することが最重要であるし、担当者として他にもこなさなくてはならない作業が山のようにあった。それでも店長に指示されればそのとおりにレイアウト変更せざるを得ず、変更時はお客様にも迷惑をかけつつ、売筋商品が後方に下がってしまうこともあった。
 私はやる気を失っていったが、業績もさらに低下し、指導を受けてはレイアウトを変え続けていくという悪循環にはまった。私はしだいに鬱々とするようになったが、そんな時に店長から痛烈な言葉を浴びた。「私は、千頭さんが一生懸命仕事をしているなんて全く思ってないよ。」-いわゆるパワーハラスメント3とされるような内容でも言い方でもない。でも、仕事自体が評価されない上に、その姿勢すら認められないのなら、それは会社を辞めろということか。当時、バブル期だったこともあるが、この店長のもとで多くの従業員が退職し、これも混乱のもとになって店全体の業績も大きく悪化した。退職者がみな私のような仕打ちを受けていたわけではないが、当時、急速に店内の雰囲気が悪くなり、多くの従業員が前向きな活力を失ったことは事実である。
 その店長は就任1年半後に、店内外のほとんど誰からも支持を得られないまま降職になった。私はその後任の店長からは叱咤激励されながら努力を認めてもらえ、業績は急回復した。私はこの頃、同僚から「千頭さんは人が変わったようだね」と言われたりしたが、新しい店長になった半年後に売場主任に昇進した。それはとても嬉しいことだったが、「思い悩む期間があと半年とか1年長かったら」と思うとぞっとすることもあった。うまくいかなかった時期のことを、全てその時の店長のせいにするつもりはない。今振り返っても、当時の私の客観的な評価は高くなかったと思う。ただ、あまりにも効果性が見込めないやり方で終始拘束され、嫌味な言葉を浴び続けることに、我慢の限界が近づいていたことは確かである。当時、私の会社は業界内でも抜群の効率経営と高収益で有名だった。でも、現場にはこうした感情的で非効率なマネジメントがあったのは事実である。
 人は故意に他者から人権を侵されてはならない。この基本的な権利が大きく損なわれている現在、ハラスメントに対して労働組合も毅然とした対応をすべきである。特にモラル・ハラスメント4にはハラスメントと判別しにくいものや、する側にもされる側にもその意識がほとんどないものも少なくない。ただ、じわじわと深く侵攻する悪意をひとつひとつ摘んでいくことは、労働者の心身の健康にとっても極めて重要である。その具体的な内容についての提言が、本稿のテーマである。

増え続けるハラスメント
 ハラスメントはセクシャルハラスメント、パワーハラスメント、モラル・ハラスメントの3つが大きな部分を占め、これらはそれぞれ重なりあう部分もあるとされる。これらのハラスメント(いじめ、嫌がらせを含む)の発生が、近年目立って増加している5。モラル・ハラスメントとは、静かに、じわじわと、陰湿に行われる精神的ないじめ・嫌がらせである。「無視をする」「わざと咳払いをする」「見下すしぐさをする」「否定する」など、周りからは些細なことのようにみえる行為でも、繰り返し行われることで、想像以上の精神的苦痛をもたらすことがある。
 町沢静夫氏(町沢メンタルクリニック院長)は、「モラル・ハラスメントの根本には、上下関係や権威を重視する封建的な考え方と、よそ者を排除しようとする村八分的な要素があるのではないか」と分析している。例えば、ある職場で新参者が今までにない視点で意見やアイデアを述べたとしよう。それらは、検討に値する貴重な内容である場合が少なくない。そこで、ただ漫然と経験を重ねただけの古参者がその発言を嘲弄し、葬り去ることがある。新参者の多くが、「言っても無駄だし、出る杭になっても打たれるだけだ。」と思い、そのうち考えもしなくなり、日々の定型的な業務の中に埋没してしまう。それでも自分の意見を主張し続ける人が、モラル・ハラスメントの被害に遭いやすい。こうした人は、仕事のパフォーマンスが悪いわけではなく、ハラッサー(ハラスメントをする人)は特に叱責しようがないので、陰にこもった攻撃を仕掛けてくるのである。
 バブル崩壊後、リストラの横行や成果主義の拡大等の影響もあり、ストレスフルで疲弊した職場が増え、ハラスメントの発生が急増している。ただ、気をつけなくてはならないのは、どんなに仕事のストレスが多くても、ハラスメントをしない人はしないということである。ハラスメントの増大については環境面の要因も確かに大きいが、ハラッサーの資質面の問題が最大の要因である。

判別基準の明確化にむけて
 セクシャルハラスメントも、軽微なものはハラスメントにあたるかどうか判別が難しい。パワーハラスメントやモラル・ハラスメントは、その判別にあたっての基準が極めて曖昧なためハラスメントと特定しにくく、ハラッサーにハラスメントをしているという意識がないことも多い。
 モラル・ハラスメントと誤解されるケースとして、例えば口下手な人が、会話の中で悪意はないが真意を伝えられずに、相手に「蔑視された」と受け取られるような場面もあるだろう。また、何らかの行為を受ける側が、被害妄想的に相手の言動を捉える場合もある。ハラスメント問題がアンタッチャブルになりやすい背景には、この判別における曖昧さがある。ハラスメントに関係する行為をいかに客観的にとらえ、問題のある行為に警告を発するか。難しい課題だが、多くの職場で問題が深刻化し、多くの労働者が悩まされている現状から、私たち労働組合役員は目をそらしてはならないのである。
 ハラスメント行為を判別するにあたっては、その言動に業務の範疇を超えた悪意や差別が存在しているか、第三者がその行為を客観的に見た際にどう感じるか、といった点がポイントになるのではないか。それを明確化するためには、ハラスメント判定にむけたある程度の基準を設定し、それに照らし合わせることが有効だろう。カナダでは、行政当局が「カナダの職場におけるハラスメントの判断ガイドライン」を作成し、公開している。ここでは、「その行動(行為、言動、感情表現など)がハラスメントを構成するかどうか評価するための視点」として、以下の5点を掲げている。

  1. その行動が不快なものや攻撃的なものか
  2. 通常人がその行為を不快なものや攻撃的なものと見なすか
  3. その行動や行為が、品位を下げたり、けなしたり、個人を侮辱したり当惑させたりしたか
  4. それは1回だけのことか
  5. 一定の期間にわたる一連の出来事か6

 日本でもこうしたガイドラインを行政だけでなく、個別の労使においても作成して周知徹底することが一刻も早く望まれる。

モラル・ハラスメントがおきやすい状況
 ハラスメント発生の多い職場にあらわれる有形・無形の現象があると思う。以下に記す状況は、それぞれの職場における与件の違いや感覚的なものもあるため、絶対視すべきことではないが、あくまで注意報として労使で捉えても良いのではないか。
 第1点目が、従業員の離職の増加である。私もスーパーの現場で見続けてきたが、同じ店で同様の商品を扱う2つの部署で従業員の定着状況が大きく異なる場合がある。退職者に本音の退職理由を聞くと、「きちんと教えてもらっていないのに、間違えると怒られる」といったものが多い。また、正社員(特にリーダー)に非正社員に対する差別意識がある場合も、非正社員は居心地の悪さを感じ、短期間で去っていくことが多い。正社員の言動の中に相手を見下したり、傷つけているものがある可能性が高い。こうして人材が定着しない職場は、絶えず人手不足に悩まされ、採用や教育にも無駄なコストと労力をかけていくことになる。他者への差別意識をもつ人が、自分で自分の首を絞めているという局面をよく見かける。
 第2点目が職場の活力や雰囲気の悪化である。私が出身単組で専従の中央執行委員をしていた頃、百店舗以上の店舗をオルグした。経験を重ねるにつれて、店舗のバックヤードに入った瞬間にその店特有の空気を感じることが出来るようになってきた。店の空気が悪い場合には、例えば挨拶が少ないとか、食堂での会話がネガティブなものばかりといった現象が見られることもあった。この店の空気と店長の性格が、恐ろしいほどに一致することがよくあった。そして、空気の悪い店舗では顕在化するハラスメントの件数が多かった。ネガティブな事項の全てを店長の資質に帰するわけではないが、人格的に未熟な人が絶対的な権限を持つことは、ハラスメント発生にもつながりやすいと言えるだろう。

被害者のタイプから見えてくるもの
 よく、いじめられる側にも問題があると言われる。モラル・ハラスメントを受けやすいのは、どのような人たちだろうか。もちろん、いろいろな類型があるため、以下に示すのはその一部である。就業上の問題や仕事上のミスが多い等の事実がある場合もあるが、それはむしろパワーハラスメントにつながりやすい。そのような明確な落ち度が、被害者にないことが多い。むしろ仕事のパフォーマンスや取り組む姿勢は、良い場合が多いように思える。
<従順型>
 あまりにも素直な性格のため、必要以上の攻撃をうけても、「それは自分も悪いのだから」と受け止めてしまう人が被害を受けやすい。このタイプの人は、ハラッサーにとって憂さをはらすのに極めて好都合である。仕事には誠実に地道に取り組み、一般的には周囲から好感を持たれる人が多い。
<高パフォーマンス型>
 仕事のパフォーマンスが高い、または専門的な能力や技能を持っているため、上司に信頼され褒められるような人が、周囲からの嫉妬が原因で被害者になってしまうことがある。
<自己主張型>
 「自分はこう考える。こうしたい。」といった主張をする人が、「未熟なくせに生意気な人間」というレッテルを貼られ、被害者になりやすい。
<独立独歩型>
 自分の意思や信念がしっかりしているため、安易に他者に迎合しない人が被害者を受けやすい。職場で主導権を握りたいために、周囲の人を支配しようとしている加害者にとって、自分の意向になびかない人は邪魔者でしかないのである。
<真面目型>
 不真面目な人が、真面目に行動している人をみると、相対的に自分の評価を下げる要因になったり、自分自身の行動が否定されているような感覚にとらわれることがある。このため真面目な人が、モラル・ハラスメントの標的となることがある。また、真面目な人は責任感の強さから言い訳的な反論をしたがらないため、攻撃されやすい。

 こうしたモラル・ハラスメントを受けやすい類型から捉えると、見えてくることがある。ほとんどのハラスメントは、本質的な努力をしない人が自分の劣等感や不安感を解消するために、他者をより低く位置づけようとすることで惹き起こされる行為と言えるのではないか。極めて卑劣であるとともに、その職場の雰囲気を悪化させて生産性も落としてしまう。この悪魔のような行為に日本の社会はあまりにアンタッチャブルだったのである。

モラル・ハラスメント対策にむけて
 モラル・ハラスメントの対策として、連合および産別組織がとるべき対策とは何だろうか。第1点目としては、モラル・ハラスメントの問題を広く社会に知らしめることである。そこで具体的な事例を示す中で、そうした行為の悪質性や行為が及ぼす悪影響の甚大さを訴えることによって、多くの良識ある人にモラル・ハラスメント防止のサポーターになってもらうことが出来るだろう。
 この問題をクローズアップし、対策についてより広く社会に訴えかけていくためには、マスコミや労働弁護団、NPO団体等の関係団体との連携も有効である。経営側としても、職場の空気を淀ませて生産性をおとしめ、人材を奪っていくハラスメントは、悪者以外の何者でもないだろう。経営団体や厚生労働省との三位一体の撲滅にむけた取り組みができれば、さらに有効ではないか。ハラスメントやメンタルヘルスの問題が深刻化する中、連合や産別組織内にこれらの問題への対策チームを作って取り組むことも提案したい。
 こうした社会的周知が進むことで期待される効果として、例えば以下のようなことが考えられる。ハラッサーAさんがBさんの悪口を同僚のC・D・Eさんにむけて、連日言い回っている状況があったとしよう。C・D・Eさんは公正な感覚を持っており、「そこまで悪く言わなくても」と思っている。でも、Aさんに賛同しておかないとハラスメントの矛先が自分に向いてくる可能性があるため、とりあえず同調している。C・D・Eさんが、モラル・ハラスメントの問題を正しく理解し、勇気と良識を持ってAさんに見方を変えるように勧めるようになれば、ハラスメントの状況も変わってくるだろう。それでも無理にAさんがハラスメントしようとすると、今度はAさんが職場で浮いてくるだろう。そもそもハラッサーは、本質的には気弱な人間がほとんどだから、それ以上のハラスメント行為を封じることも可能だろう。
 第2点目としては、組織内議員との連携等を進めて政治への働きかけを強化することである。既にフランスで立法化7されているように、日本でもモラル・ハラスメントを規制する法律が制定されるよう運動を強化していくべきである。セクシャルハラスメントについては、2007年4月より施行されている「改正男女雇用機会均等法」において、セクシュアルハラスメントに関する事業主の雇用管理上の措置の義務化が定められた。さらに、この講ずべき措置として、指針で9項目が定められた8。パワーハラスメントやモラル・ハラスメントについても、この内容をベースに立法化されるよう取り組むことが有効だろう。
 第3点目として、個別労使において、パワーハラスメントやモラル・ハラスメントに関する発生防止や対処等について労使協定を締結するよう、指導を強化することである。内容については、セクシャルハラスメント対策において指針で示された9項目等も参考にして、それぞれの労使における議論をふまえて作成するとよいだろう。さらに、個別労使において、労使トップの撲滅宣言や行動規範の設定、従業員への教育、相談窓口の設定、実態に関するアンケート調査の実施と対策の立案等、ハラスメント発生防止や対処にむけた取り組みの強化が望まれるところである。また、「弱きを挫く」ようなマネジメントがおきないよう、人事考課において、360度評価等により多面的に評価する仕組みを導入することもハラスメント発生防止に効果的である。こうした労使の取り組みは、従業員の健康や定着、新たな人材の獲得にむけても有効に作用するだろう。

おわりに
 現在、グローバル化の進展の中で企業間競争が激化し、業務の効率化やIT化も日進月歩で進んでいる。そこで働く労働者は、いつも急かされ、緊張を強いられる場面が増えている。こんな時代こそ、働く人の気持ちに寄り添い、意欲的に仕事をしてもらうための働きかけや環境整備についての教育や啓発が、労使に求められているのではないか。「そんな悠長なことを言っていられない」と、目先の対応ばかりに奔走する経営は、確実にやって来る労働力不足の時代に労働者から見捨てられることになるだろう。
 ハラッサーに対しても、単に排除すればよいということではなく、行動や考え方を変えるようメッセージを発信し続けていかなければならない。そうしないと、ハラッサーはステージが変わっても、新たにハラスメントをする可能性が高い。私は、ハラッサーに以下のメッセージを示して、本稿を終える。

ハラスメントをする人たちへ
 周りの人たちの大半は、あなたのことを認めていません。本当に嫌だと思いながら、無用なトラブルを避けようとしているだけです。あなたが今持っている権限なんて、職場を離れれば何の意味もありません。ストレスが溜まっているのは、あなただけではありません。
 あなたはハラスメント行為を忘れても、受けた側は一生忘れないかもしれません。せめる者はいつかせめられ、見捨てられる可能性を大いに秘めています。他人を貶めて、本当に幸せですか。人に親切にして感謝される方が、ずっと心地よいのではないでしょうか。そんな無味乾燥な生き方を止めませんか。
 今なら間に合うと思います。


1 売れ行きの悪い商品

2 売れ行きの良い商品

3パワーハラスメントという言葉を生み出した岡田康子氏(クレオ・シーキューブ代表)による定義は、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること。」

4フランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌが提唱した造語。外傷等が残るため顕在化しやすい肉体的な暴力と違い、言葉や態度等によって行われる精神的な暴力は、見えづらいため長い間潜在的なものとして存在していたが、イルゴイエンヌの提唱により知られるようになる。イルゴイエンヌは著書の中で「『モラル・ハラスメント』も、『精神的暴力』や『精神的虐待』とも呼べる、とてもひどい人権侵害なのです。巧妙に人の心を傷つける『モラル・ハラスメント』。この見えにくい暴力は、被害者を精神的に殺していきます。ひどいときには、被害者を自殺に追いやることさえあるのです。」と述べている。(フリー百科事典『ウィキペディア』、およびGoogleホームページより)

5 厚生労働省「平成19年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、民事上の個別労働紛争に係る相談内容の内訳は、「解雇に関するもの」が最も多く22.9%、「いじめ・嫌がらせに関するもの」、「労働条件の引下げに関するもの」がそれぞれ12.5%で続いている。
東京都産業労働局「労働相談およびあっせんの概要(平成19年度)」によると、平成19年度の労働相談の総計は54,699件、このうち「職場の嫌がらせ」相談件数は5,258件で全体の9.6%を占め、平成14年度より66.3%増加した。相談内容も職場の嫌がらせから「体調不良になった」「会社が対応しない」など多岐にわたっている。
警察庁生活安全局地域課「平成19年中における自殺の概要資料」によると、平成19年の自殺者数は33,093人で、原因・動機別では「勤務問題」による自殺者は2,207人である。このうち、「職場の人間関係」による自殺者は514人である。ただし、原因・動機別で「健康問題」の中の「病気の悩み・影響(うつ病・その他の精神疾患)」による自殺者が、7,257人おり、この中にも「職場の人間関係」が原因で精神疾患を発症し、自殺に至った人が相当数いると想定される。

6 天笠崇 訳

7 フランスでは2002年1月に公布施行された「労使関係近代化法」により、(1)企業内における「モラル・ハラスメント」を規制する条文を導入(労働法L122-49条~54条)。 労働法典第122-49条は、「いかなる労働者も、その権利と尊厳に損害をもたらし、その肉体的又は精神的健康を失わせ、または結果的にそうした悪化を招くようなモラル・ハラスメントを繰り返しうけることがあってはならない」と規定。こうした行為を「受けたり、受けることを拒否した理由として、またはそれについて証言・口外したことを理由として、制裁を受けたり、解雇されたり、報酬、訓練、再就職斡旋、配置、資格、等級分類、昇進、配置転換、契約の更新などにおいて、直接又は間接に差別的な措置を適用されることがあってはならない」とした。(2)被用者の身体的健康だけにとどまらず精神的健康含めて健康予防における使用者の責任を拡大する(労働法L230-2-1条)―という労働法の改正が行われた。同時に、刑法にも罰則規定が設けられた(刑法222-33-2条)。(労働政策研究・研修機構ホームページより)

8 9項目の内容は以下のとおりである。
①職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
②職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
③相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定めること。
④相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
⑤事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
⑥職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置及び被害を受けた労働者(被害者)に対する措置をそれぞれ適正に行うこと。
⑦改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。なお、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
⑧職場におけるセクシュアルハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該セクシュアルハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
⑨労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談をしたこと又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。


参考文献
マリー=フランス・イルゴイエンヌ著 高野優 訳(1998)「モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない」
マリー=フランス・イルゴイエンヌ著 高野優 訳(2003)「モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする」


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