私の提言 連合論文募集

第3回入賞論文集
佳作賞

少子化社会における労働組合*1への期待

―子育て権保障をめぐって―

前角 和宏(※本人の希望により削除しました)

I はじめに

 合計特殊出生率。

 このことばを何度見聞きしたことだろうか。平成元年の値に対し、「1.57ショック」といわれてからもさらに低下の一途を辿り、平成17年には1.25*2となった。加えて、平成年間に入ってから急速に「理想子ども数」と「予定子ども数」がともに低下しているという調査結果*3は、将来的に見てもこの値が回復しそうな兆しがないということを如実に表している。

 われわれは、このような日本社会を憂う必要があるのではないか。つまり、わが国の社会が子どもを生み育てたいと思わないような不健全な社会であり、これまでわが国が歩んできた道がどうも間違っており、引き戻してでもよりよい社会にすべきであると、少子化という現象がわれわれに警鐘を鳴らしているのではないかと思えてならない。少子化という現象下にあるわれわれが、このことばに振り回されるのではなく、よりよい社会を実現していくためには冷静にどう行動していくべきなのだろうか。本稿では、わが国が直面しているそのような重大な課題に対し、労働組合がどのような役割を担い得るのかということを考察していきたい。

1.少子化社会の現状

まずは、少子化について少し整理しておこう。少子化が進行すれば、[1]人口減少社会、[2]経済成長の鈍化、[3]税や社会保障における負担の増大、[4]地域社会の活力低下などがわが国や地域の持続可能性を根底から揺るがすこととなる。*4その原因は、[1]未婚化の進展、[2]晩婚化の進展、[3]夫婦の出生力の低下であり、また、その社会的要因には、[1]結婚・出産の機会費用増大、[2]育児・教育コストの負担増、[3]育児に対する負担感、[4]仕事と子育ての両立の負担感などがあげられており、社会的、経済的な側面のみならず、教育的、文化的側面があるなど単純なものではなさそうである。*5

それゆえ、少子化にかかる施策については様々な立場*6から、大別すると、
[1]少子化そのものを是とし、社会への影響に対する施策を検討すべきである。
[2]少子化を否とするものの、そのまま放置し、その改善策を施すべきではない。
[3]少子化を否とし、その改善対策を施すべきである。
などの見解が示されている。

2.労働分野における問題の所在

(1) 子育て権

 本稿は、「少子化を否とはするが、単に少子化対策を施すのではなく、例え多子化社会を迎えることとなった場合でもその理念の変更を余儀なくされないような普遍的な施策をとるべきである」という立場をとる。そこで、本稿ではそのような施策のために必要な理念であると思われる「子育て権」*7に着目する。注意すべきは、少子化という現象はまだその進行を緩めるような気配がないと思われることから、社会への影響を考えると急激な変更を余儀なくさせるような施策ではなく、ソフトランディングできるような施策を検討する方が現実的であろう。

(2) 問題の所在

 子育て権行使に対する労働分野における主な阻害要因は、[1]長「拘束時間」(時間数および休日等)、[2]女性の就労阻害、[3]若年層の就労阻害等が考えられる。次章以降では、紙幅の都合もあり、少子化社会において子育て権行使のために解消すべき労働分野の課題の一事例として、[1]の長「拘束時間」の現状と課題を概観し、労働組合がそのような課題を解決するためにどのような役割を果たすことができるのかという点について検討していくこととする。

II 子育て権行使を望む労働者の労働環境における現状とその課題

-長「拘束時間」*8を中心に-

1.少子化社会における「標準家族」とは

 近時、ホワイトカラー労働者など雇用形態の差異化*9に伴い、労働者か否かを判断するうえで困難な場合*10があるものの、労基法は、9条に規定する「職業の種類を問わず」広い範囲での労働者に対し、労働時間をはじめとする労働条件の最低基準を規定した。少子化社会を迎えるにあたり、わが国が構造改革を叫び、その結果労働関係諸法が幾重にも配置され、また、目まぐるしく再配置されようとも、労基法がその中心的地位にあるという点は何ら変わるものではない。*11労働関係諸法がこのような大きなうねりの中にある今、あらためて、その中心的地位を占める労基法基本原則の理念を再確認する必要がある。

 労基法は、憲法25条の生存権の理念をその源流とし、憲法27条2項の付託に基づき、労働条件を「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」(労基1条)と規定し、これは、「労働者に人格として価値ある生活を営む必要を充たすべき労働条件の保障を闡明し、本法各解釈の基本観念を為す」(22・9・13発基17)ものであり、さらに、「人たるに値する生活」とは、「その時その社会の一般通念による標準家族の生活をも含む」(22・9・13発基17、22・11・27基発401)べきものである。

 現代社会においては、多様な価値観のもと、さまざまな家族形態が存在し、標準家族というものを定義することは困難ではあるが、本稿では、「家庭や子育てに夢を持ち、かつ、次代の社会を担う子どもを安心して生み、育てることができる環境」(少子化社会対策基本法2条)を整えることによって、子育て権を行使することのできる家族を標準家族と定義するならば、労基法における労働条件の最低基準は、ここで定義した標準家族を常に意識しなければ、戦後の混乱期におけるそれと同様に単なる到達目標でしかなり得ず、少子化社会において子育て権を行使するうえで有効となるそれにはなり得ないのである。

2.長「拘束時間」問題*12

(1)両親の帰宅時刻と子育て権行使

 少子化社会において子育て権を行使するうえで最も重要な課題は、長「拘束時間」問題である。全国の満3歳から中学3年生までの児童・生徒のいる世帯を対象とした厚労省調査*13によれば、母親の3分の2が帰宅時刻を「午後6時前」としているのに対し、父親の半数は「午後8時」になっても帰宅していないというのが現状*14であり、子どもの生活時間を考えると子育て権を行使できるものではないという判断となろう。*15また、これを全労働者に対象を広げた場合、その割合が増加するものと容易に推測できよう。

(2)他の施策への影響

 この長「拘束時間」問題は、他の施策にも強く影響を与えるものである。たとえば、育児休業である。夫婦共働き世帯の場合、「拘束時間」が長い現在の労働環境においては、夫婦のいずれか一方がこの長「拘束時間」から開放されなければ、あるいは、夫婦間で相互調整ができる労働環境にならなければ、子育て権を行使することは困難である。しかし、この長「拘束時間」問題が改善されることに伴い、育児休業の必要性が低減し、その休業取得者への給付等の国や使用者からの負担も不要となり、さらには育介法の本来の趣旨でもある「雇用の継続」を図る(育介法1条)など、育児休業に対し強い影響を与えるものである。

(3)労働時間法制における基本原則と「拘束時間」

 戦後労基法が、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきもの」(労基1条)として労働条件を規定し、その中核を成す労働時間法制における基本的な考え方は、「一日8時間労働制」(労基32条)であり、かつ「同一時間の周期的反復」を前提としていたということである。*16この労働時間法制に関する基本的な考え方は、労基法制定後50年を経た今なお、少子化社会における子育て権の行使に有効な考え方であるということに異論はあるまい。

 もちろん、わが国の労働環境における現実に目を向けると、この労働時間法制の基本原則において有形無形の相当困難な問題*17が胚胎しているという点は十分承知しているつもりではあるが、労基法制定時の崇高な理念に立脚し、少子化社会における子育て権を行使するうえで最優先に考えるべき点がこの「拘束時間」であるということを、ここで確認しておきたい。

III 子育て権行使を望む労働者からみた労働組合の現状と課題

 子育て権を行使するうえで様々な課題が山積しているのが現状であるが、前章では子育て権を行使するうえで課題となる事例として、長「拘束時間」問題を取り上げ検討した。本章では、少子化社会において労働者が抱えるこのような課題に対し、いかに労働組合が関わり、その使命を果たすことができるかということを検討する。

1.事業主主導の少子化対策

(1)労働組合の子育て支援の必要性に対する認識不足

 少子化対策における議論に、行政や使用者の顔が見えるが、労働組合の顔がどうも見えない。次世代育成支援対策推進法(以下、次世代法とする。)が事業主への行動計画の策定を義務付けた(12条等)ことを受け、事業主は、「職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備を行うことにより自ら次世代育成支援対策を実施す」(5条)べく、事業主主導で制度設計を行っている。しかも、少子化対策関連法を上回る条件を示す事業主*18も多く存在するのである。

 では、なぜ少子化対策は事業主主導なのか。日本経済団体連合会が今年5月に発表した『産業界・企業における少子化対策の基本的取り組み』において、少子化を「自らの問題」と捉え、少子化に伴う労働力不足・労働生産性低下を視野に入れ、その取り組みにかかる「コスト負担」を「投資」と位置づけ、その対策を行うことにより「労働力の確保」等の必要性を述べている。その内容は、実際に構築された制度がさらにその先を進んでいるという点からも、制度構築が進んでいない企業への啓蒙ともあるいは警告とも受け取ることができる。

 次世代法等の少子化対策に基づく新制度設計は、労働組合にとって労働条件改善への絶好の機会だったはずである。これは、労働組合における子育て支援の必要性に対する認識が不足している結果だといえまいか。つまり、労働組合は、少子化を「自らの問題」と捉えていないのではないのか。また、子育て権の行使を望む労働者の労働実態を把握しようとしていないのではないのか。

 日本経団連の発表を理想論であると受け流すことは簡単である。同時に事業主側においても、子育て支援に関する制度に対し「ニーズがない」*19と一蹴する事例も見受けられるが、その場合においても、労働者全体の把握はともかく、少なくとも労働組合員のニーズを労働組合は正確に把握していたうえで、事業主に「ニーズがない」と言わせてしまうのだろうか。実際には「ニーズがある」にもかかわらず、である。

(2)子育て権行使を望む労働者以外の労働者への労務負担調整困難(人員補充・当該部署等における労働者間の意識差等)

 同一事業所や部署等内においては、子育て権を行使したいと望む労働者とその必要のない労働者がそれぞれ存在する。子育て権を行使するうえで有形無形の阻害要因があるが、その実態を労働組合は把握していたのか。あるいは、把握しようとしたのか。また、このような実態に関する調査やその啓蒙活動・指導について、労働組合は事業主に過度に依存していないであろうか。

 子育て権を行使するうえで、その必要性を当該事業所や部署等において説き、両者間の調整の役割が機能することが大変重要である。一労働者の子育て権行使に伴い、その残務等業務を処理するうえで必要な対応策を検討する際に、当該労働者の直属の上司や同一事業所や部署等に配属されている労働者へのヒアリングを行い、ときにはあらためて子育て支援の必要性を説くことにより、これまで子育て権の行使を思い止まっていた労働者が行使しやすくなると思われる。これを労働組合が全面的に担うということは当然不可能であるし、担うべきではない場合も少なからずあろう。しかし、少なくとも事業主へ実態把握を要請し、またその調査結果の開示を求めたうえで、新制度設計にかかる提言を労働組合が行うことは可能であろう。

(3)支援制度について労働者への周知不足

 子育て支援制度があっても、「知らない」*20とする労働者の存在が少なからずある。この事実を労働組合はどう受け止めるのか。先に子育て支援が事業主主導であるとの指摘はしたが、子育て支援制度等の労働者にとって改善された労働条件については労働組合が獲得したものであることに違いはないはずである。そうであるならば、なぜ労働者の回答が「知らない」となるのか。たとえば、労基法は、「労働条件の明示」(15条)を使用者に求めているが、労働組合は団体交渉等を経て獲得した労働条件等の労働組合員に対する周知は、単なる労働者としての労働環境改善交渉結果にかかる報告のみならず、今後の組合員を育てるための組合員教育という観点からも重要な役割を果たしているものと思われる。つまり、労働組合の労働組合員に対する団体交渉等の産物にかかる情報の伝達は、単なる「明示」では不十分で、それを必要とする労働組合員へヒアリング結果のフォローアップとしてしかるべきである。

2.労働組合活動と職業生活・家庭生活の両立

 労働組合の組織率低下*21は、労働組合の存続意義を問いかけるものである。少子化社会においては、さらに労働力不足が予想され、当然に労働組合員数の減少を余儀なくされるものである。あまつさえ、通常労働組合へ加入しようとする労働者は若年層であり、その構成員はほぼ子育て権行使を望む世代といえ、職業生活と家庭生活の両立にかかる施策さえ有効でないといわれている中で、さらにそれらに加えられる労働組合活動は負担でしかなりえない。これら三者のバランスをはかることができるような労働組合活動が求められる。これは労働組合としては最も困難な課題でもあるが、少子化という社会からの要請として真摯に受け止めるべき課題である。

3.雇用形態の差異化

 少子化社会においては、雇用形態の差異化がますます顕著になるであろう。その場合、労働組合の組織率が上がれば上がるほどに予想される課題が、その雇用形態の差異化に伴う労働組合要求の多様化・分散化である。特に、流通業においては、非正規労働者の増加に伴い、36協定等締結の際に労働組合が労働者代表となり得ない事態に陥る場合がある。*22どう非正規労働者を労働組合に取り込んでいくべきか。たとえば、過半数組合になりえたとしても、正規・非正規労働者間の要求に、[1]正規労働者の雇用保障を強めれば、非正規労働者が締め付けられ、[2]正規・非正規労働者間での賃金格差是正や同一労働同一賃金を目指そうとする場合、正規労働者の条件低下が予測されるなどの矛盾点が現われ、それぞれの要求調整が相当困難になることは容易に予想される。

 今後労働組合は、組織率向上やそれに伴う交渉力の向上の観点からもこの課題をどう乗り越えていくのかが問われるところである。

IV 子育て権行使を望む労働者が期待する労働組合の役割

 前章において検討した少子化社会における労働組合の現状と課題、そしてその課題に対する若干の検討を試みたが、それらの課題は以下の点に集約されると思われる。

1.業務実態にかかるヒアリング

 労働組合が取り組むべき最優先課題は、少子化を「自らの問題」として捉え、子育て権行使のための業務実態にかかる組合員個々人へのヒアリングを行い、支援制度の必要性に対し認識を高め、当該企業等における支援制度設計をはかることにある。そこには、有形無形の阻害要因があり、特に、無形の阻害要因については、事業主主導による人事業務面からのアプローチでは深く取り組めない点があろう。この阻害要因の把握解消こそが今後の労働組合にとって大きな役割であり、最も期待するところである。

2.少子化対策支援制度確立および周知

(1)人事課等との連携をはかり支援制度を確立

 先に少子化対策が事業主主導であるとの指摘を行ったが、実効性のある具体的制度設計には人事課の把握する労働者のニーズを越えるようなニーズを把握し、人事課等と連携を取りながらも優位に制度設計構築を進めることが望まれよう。

(2)制度確立後は従業員への周知をはかる普及啓蒙活動支援

 子育て支援制度確立後は、組合員への周知をはかり、また可能な限り当該事業所や部署等への働きかけを行い、労働者が子育て権を行使しやすいような労働環境を確保できるようその制度普及啓蒙活動を推進することが必要である。特に、子育て権行使を望む労働者が配属されている事業所の同僚や上司等への面接指導等の啓蒙活動が人事課等との連携により必要である。

3.監視体制の強化

 子育て支援にかかる制度を確立した後には、当該制度の利用に関する監視体制を強化する必要がある。いかによい制度であっても利用されなければ意味のないものである。その実態調査により、その後の当該制度普及啓蒙活動の動きにも影響が出てこよう。

 これまで触れてはいないが、監視体制として強化すべき項目として、36協定締結等の妥当性の監視についても指摘しておこう。36協定の締結には、「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定」(労基法36条1項)を締結する必要があるが、過労死問題等の発生が後を絶たない現状からも、過労死の大きな要因ともいえる「時間外労働」等にかかる36協定に対して、その後のチェック機能を協定締結当事者として労働組合が果たしているとは言い難い。使用者の法令順守に対する監視体制を早急に整えるべきであろう。また、育介法において、一定の条件を満たした「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」(17条1項)が請求した場合への配慮として、時間外労働の「制限時間(1ヶ月24時間、1年150時間)を超えて労働時間を延長してはなら」(17条1項)ず、深夜(「午後10時から午前5時までの間」においても「労働させてはならない」(19条1項)としている。この点についても、36協定同様に監視強化できるような体制確立に期待したい。

V おわりにあたって

 少子化社会における労働組合が直面する課題に、労働力不足に伴う当然組合員数の低下が考えられる。少子化支援にかかる制度設計には、官労使の役割がそれぞれ必要であるが、今見る限りどうも労働組合の分が悪いと感じる。少子化社会を乗り越え、よりよい社会を実現するためにも、労働組合が職業生活と家庭生活に加えた労働組合活動のバランスをはかったうえで、組織率を向上させ、企業内での交渉力向上はもとより、労働政策審議会をはじめとする官労使三者の政策検討の場での交渉力を高められることを期待する。


*1 本稿において、特に言及せず労働組合とした場合、企業別労働組合だけではなく、産業別労働組合や労働組合のナショナル・センターも含めることとする。

*2 厚生労働省大臣官房統計情報部「平成17年人口動態統計月報年計(概数)の概況」。なお、本稿執筆中に、平成18年度上半期の出生数が6年ぶりに増加しているとの調査結果(総務省「全国推計人口の推移」)が出たが、この要因には、[1]「20代の初婚率低下に下げ止まりの兆しがみられる一方、30代で上昇傾向が続いている」(日経新聞平成18年8月21日朝刊1面)との見方もあるが、[2]「団塊ジュニアが出産年齢を迎えたなど一時的要因が大き」(日経新聞平成18年8月23日朝刊2面)いとの見方もあり、いずれにしても楽観視できないと思われることから、本稿においては、この点に関し状況を静観するという程度に留める。

*3 国立社会保障・人口問題研究所『第13回出生動向基本調査-結婚と出産に関する全国調査夫婦調査について 結果の概要-』(2006)

*4 「少子化社会対策大綱」(平成16年6月4日閣議決定)

*5 内閣府『平成16年版少子化社会白書』16頁(ぎょうせい、2004)

*6 たとえば、本川達雄「生物学から『少子高齢化』を考える」正論410号272頁以下(2006)、池本美香『失われる子育ての時間 少子化社会脱出への道』(頸草書房、2003)、清家篤=岩村正彦『子育て支援策の論点』(社会経済生産性本部生産性労働情報センター、2002)、鈴木りえこ『超少子化-危機に立つ日本社会』(集英社、2000)、高藤昭「少子化問題に対する基本的視点」『少子化と社会法の課題』26-29頁(法政大学出版局、1999)参照。

*7 高藤昭「少子化問題に対する基本的視点」『少子化と社会法の課題』26-29頁(法政大学出版局、1999)参照。

*8 本稿では、単に拘束時間とした場合は、「始業時刻から就業時刻までの時間」(菅野(2003)251頁)、つまり、「労働時間(労基法32条)と休憩時間(労基法34条)を合わせた時間」(菅野(2003)267頁)とし、「拘束時間」と表記した場合は、この労基法にいう労働時間および休憩時間に、通勤時間、出張等に要する時間、および本務外活動(たとえば、更衣、洗身、準備後始末労働、安全教育、研修、小集団活動などが考えられる。(東京大学労働法研究会(2003)513頁))を加えた時間をいうこととする。一日24時間からこの「拘束時間」を除いた時間数分を子育て権の行使に充当できるということになり、本稿では、その時間を確保する必要があるという点を指摘しておきたい。

*9 西谷敏『規制が支える自己決定-労働法的規制システムの再構築-』25頁(法律文化社、2004)は、一般に表現される「労働者の多様化」、「雇用形態の多様化」、「働き方の多様化」などの労働にかかる「多様化」を、労働者が主体的になす「多様化」と使用者が経営政策として労働者に課す「多様化」を明確に区別する必要があるとして、後者を「差異化」としており、本稿においても、「多様化」を労働者のそれとし、使用者のそれを「差異化」として区別することとする。

*10 柳屋孝安「非労働者と労働者概念」日本労働法学会『講座21世紀の労働法第1巻』128頁以下(有斐閣、2000) 参照。

*11 西谷敏『規制が支える自己決定-労働法的規制システムの再構築-』55頁以下(法律文化社、2004)参照。

*12 たとえば、神戸新聞社サイト
<http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou/030312ke100080.html>(最終アクセス2006年7月5日15:40)では、「過酷なサービス残業で死亡 神戸の企業を告発」とのタイトルで、死亡の原因をサービス残業に結び付けて記載している。サービス残業は時間外労働をさせたにもかかわらず、それに対し割増賃金を支払っていないという労基法における割増賃金支払義務違反であり、死亡に至らしめたと思われる原因は、長「拘束時間」であると思われるが、長「拘束時間」による過労死は安衛法における使用者の安全配慮義務違反である。マスコミ等においても、このように一部誤解を招く表現が散見されるため、過労死同様、少子化対策に関する議論や紹介をするうえでも、問題は、長「拘束時間」にあるということを報道してもらいたいと願う。

*13 「両親の帰宅時間」厚生労働省『児童環境調査』(2001年)<内閣府『平成17年版少子化社会白書』42頁(ぎょうせい、2005)所収>

*14 ただし、この調査はあくまで「満3歳から中学3年生までの児童・生徒のいる世帯」を対象としているのであって、家族的責任を持たない労働者は含まれていないという点については、注意すべきであろう。

*15 「夫と妻の家事関連時間(子どものいる世帯)」総務省統計局『社会生活基本調査』(2001年)<内閣府『平成17年版少子化社会白書』41頁(ぎょうせい、2005)所収>によれば、6歳未満の子どものいる夫の平日の育児時間は16分である。ただし、夫の休日の育児時間も1時間に満たないというのは、女性の育児負担を軽減するうえで憂慮すべきであろう。

*16 西谷敏『規制が支える自己決定-労働法的規制システムの再構築-』58頁以下(法律文化社、2004)参照。

*17 たとえば、他の労働者への気兼ねによって、定時退社できないなど「拘束時間」を議論するうえで、心の「拘束」も相当比重の高い問題であると思われる。

*18 「企業の子育て支援最新事例」労政時報3682号32頁以下(2006) 。東京商工会議所少子高齢化対策特別委員会『人口減社会に中小企業はどう立ち向かうべきか 出産・子育てに優しい経済社会の確立を目指して』(東京商工会議所企画調査部、2004)。

*19 今田幸子=池田心豪『労働政策研究報告書No.50 仕事と育児の両立支援-企業・家庭・地域の連携を-』53頁以下(労働政策研究・研修機構、2006)。

*20 日本労働研究機構調査「女性の仕事と家庭生活に関する研究調査」(2001)

*21 厚生労働省調査「労働組合数、労働組合員数及び推定組織率の推移」(2006)

*22 藤村博之「パート組織化の重要性」 Business Labor Trend374号i頁(2006) 参照。


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