労働組合とは何か~単組、産別、ナショナルセンター、地域組織の役割と活動
1.はじめに
連合大阪で事務局長をしております、脇本ちよみと申します。
働いていると、辛いことや大変なことがたくさんあります。我慢の限界を超えてどうしようもなく腹の立つこともあります。しかし、多くの人たちは生計を営むために、それを我慢しながら働き続けています。でも、同じ働くなら、仲間と快適に楽しく働きたいと思っているはずです。このような葛藤のなかで、労働組合がどのような役割を果たしているのかについて、これからお話しをしていきたいと思います。
2.労働組合の役割
働く上での悩みはいろいろあります。たとえば、契約内容と実際に働いている労働条件がまるで違ったり、パートやアルバイトであるという理由で正社員と差別的な取り扱いをされることがあります。有期雇用の場合には、「契約更新の度に不安だ」という声もよく耳にします。順調に契約が更新されれば問題ありませんが、「今月であなたとの契約は終わりです」と言われたら、翌月から職を失ってしまうかもしれません。また、派遣と請負とでは働き方が全然違うにも関わらず、自分が派遣で働いているのか、請負で働いているのかよくわからないという場合があります。さらに、仕事中のケガについては、「労働災害」として、労働者災害補償保険から保険給付がされることになっています。しかし、「君がうっかりしてたのだから、労災の給付金は出ないよ」と言われたという場合もあります。例をあげればきりがありません。
誰しも安心して働きたいと思っています。しかし、「派遣やパートであっても有給休暇を取得する権利がある」と分かったとしても、自分一人では、課長や部長に「なぜパートには有給休暇がないのですか」とは言いにくいと思います。一人で言うのにはかなり勇気がいります。ですから、「みんなで声をあげて労働者の権利を主張する」というのが労働組合の役割です。労働組合があれば、会社側に労働条件の改善を要求し、交渉することができます。
3.労働組合(労働者)に関わる法律
憲法28条に「労働三権」が保障されており、労働組合には会社と対等な立場で交渉する権利が認められています。「労働三権」の1つ目は団結権です。これは労働組合を作って、団結する権利のことです。2つ目は団体交渉権です。これは、労働組合が使用者と交渉を行う権利のことです。3つ目は団体行動権です。これは労使の交渉が決裂した場合、労働組合がストライキを行うことができる権利です。
また、労働組合に関わる法律としては「労働三法」があります。1つ目は労働基準法です。この法律には「使用者は労働者を1日について8時間を超えて労働させてはならない」等、働く上での最低限の労働条件が定められています。2つ目は労働組合法です。この法律は、団結の力をもとに、使用者と対等の立場で労働条件を向上させるよう、労働組合が活動する権利を保障しています。3つ目は労働関係調整法です。この法律では、労働争議が発生した時に、労使が誠意をもって自主的に解決を図るよう努力することや、労働者と使用者の争いを解決するための政府の責任が規定されています。
4.労働組合の種類と役割
労働組合の組織は3種類あります。1つめは企業別労働組合です。企業別労働組合では企業を単位として労働組合が作られ、労働条件を良くするために会社と交渉をします。2つめは産業別労働組合です。これは、同じ産業で働く企業別労働組合が集まって作られた労働組合です。産業別組合は、その産業で働く労働者の基本的な労働条件等を、産業ごとに考えていきます。3つ目にナショナルセンターがあります。連合はこれに該当します。ナショナルセンターは産業別労働組合、企業別労働組合がさらに大きくまとまったもので、産業の枠を超え、労働者全体のことを考えます。ですから、連合は、労働者全体の問題について、政府に協議を申し入れたりします。
5.労働組合のメリット
では、労働組合を作ると、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。働く側からすれば、不満や苦情を、組合が会社側に伝えてくれるという点が挙げられます。その結果、会社の風通しがよくなります。職場のルールや賃金・労働時間が話し合いで決まり、労働条件が改善されます。くわえて、労働者の働きぶりが公正に評価され、納得できる職場環境も生まれてきます。
また、労働組合があることによって会社にもメリットが生まれます。たとえば、働きやすい職場になれば、従業員の意欲が向上して生産性が高まります。くわえて、働く人と会社側との情報の共有化が進めば、仕事の効率も上がり、さらには労使紛争を未然に防ぐこともできるのです。このように、労働組合があることは会社側にとってもメリットがあるのです。
6.労働組合の現状と取り組み課題
(1)労働組合の現状
現在、労働組合に加入している人の割合(労働組合推定組織率)は約18パーセントです。したがって、約8割の人が労働組合のない職場で働いていると考えられます。ですから、連合は、労働組合のない職場に、どうやって労働組合をつくるかということを大きな課題として考えているところです。
(2)取り組み課題
近年、派遣やアルバイトといった非正規雇用で働く若者がとても増えています。また、年収200万円未満で働く人も非常に多くなっています。働いてもギリギリの生活さえ維持が困難、もしくは生活保護の水準にも満たない収入しか得られない労働者を、ワーキング・プアと言います。20歳代、30歳代の方にワーキング・プアが増えてきており、経済的事情によって結婚もできないし、たとえ結婚できたとしても、子どもを産んで育てられないという状況が生じてきています。
一方、正社員には長時間労働の問題があります。その結果問題になっているのが労働災害です。脳・心臓疾患で倒れる方、精神障害に罹患する方、そして自殺される方が増えています。
また、女性は男性に比べ、正規労働者が少なく非正規労働者が多いこと、管理職が少ないこと、賃金が低いことなど、男女間格差の問題が存在しています。
7.おわりに
今後の労働組合の大事な仕事の一つは、ワーキング・プアが存在するといった「格差社会」の是正をはかることです。そういう取り組みを引き続き、進めていこうと考えております。
最後に、みなさんが就職された時には、ぜひ労働組合の仲間に加わっていただくことをお願いして、講義を終了させていただきます。
以上
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