第18回マスターコース修了論文集

奨学金問題の現状と課題
~労働者自主福祉事業団体の果たすべき役割~

榎本 明 (こくみん共済coop(全労済))

<概要>

 本稿の目的は、高等教育に修学する若年層の奨学金問題を考察することにある。奨学金利用者数は、1990年代半ばまで、全大学生の20%ほどであったが、2012年には奨学金利用者の比率が、全大学生の52.5%に達している。2人に1人が奨学金を利用する時代になっている。独立行政法人日本学生支援機構(以下、日本学生支援機構)の第二種奨学金の平均貸与額は、343万円となっている。そのことは高等教育を卒業した多くの若年層が卒業と同時に多額の借金を背負い社会に出ていくという大きな社会問題となっている。また、卒業後に奨学金の返還ができなくなる利用者について、新聞、テレビ、インターネット等で数多くのニュースになっている。もともと奨学金は、経済的に豊かでない家庭出身者へ高額な授業料の高等教育への進学機会を提供する一定の役割を果たしてきた。しかし、昨今の奨学金利用者の急増は、様々な社会的な問題を生み出している。
 本稿では、奨学金利用者の急増には、いかなる社会的背景があったのか、奨学金制度の変化が若年層にどのような影響を与えたのか、そして今後の奨学金制度の改善の方向性、労働者自主福祉事業団体として果たすべき役割について考察していく。

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