梅田 貴史(情報労連・通建連合)
現在の日本においては、超少子高齢化が深刻な社会問題となっており、その影響からも労働力人口が年々減少しているため、多くの業界において人材確保が喫緊の課題となっている。とりわけ、建設業では深刻な労働力不足が起こっており、現場従事者の高齢化と建設業界に興味を持つ若者が少なくなっていることが大きな問題となっている。実際に総務省の労働力調査における20~24歳の建設業界入職者数は、1995年は64万9000人であったところ、2010年は15万5000人と76%も減少している。このような状況の中、建設業の労災事故の統計を見ると、近年は300名ほどの建設従事者が命を落としており、日本の全産業の中で最も多くなっている。その中でも高所からの転落、墜落による事故が最も多く、様々な機関、組織において安全対策・施策等を立案し現場に対する安全啓発活動が盛んに行われているが、死亡事故の撲滅に至っていない現状にある。建設業の一環である通信建設業においても、多種多様化するネットワークの構築およびデータ通信の高速化等に対応するため、現場の仕事はスピード感を増している。そのような中、通信建設業界では上記のような高所からの転落、墜落等の人身事故が多発している。通信建設各組織は現場の繁忙状況を認識しながら、労働安全衛生の確立に向けて労使で事故撲滅に向けた取り組みを展開しているが、高所からの転落、墜落による人身事故に歯止めがきかない状況が続いている。
本論文では、筆者が属する通信建設業界で多発する人身事故に強い危機を痛感する立場から、通信建設業界で働く仲間の命を守る取り組みを展開すべく「安全に働くことのできる魅力ある職場環境」の構築に向けた新たな方法を見出したい。そして、労働安全衛生の確立に向けて、どのように実践していくべきかについて、国内外の建設現場の労働安全衛生の取り組みにヒントを探り、通信建設業界における死亡事故の撲滅に向けた労働安全衛生の発信ができることを目的としたい。
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