第18回マスターコース修了論文集

労働組合組織率低下の政治的要因
―スウェーデンの事例から学ぶ―

一木 洋佑(労金協会・労働金庫連合会)

<概要>

 労働組合の活性化は、労働運動の発展において重要な課題だ。しかし、世界的にも労働組合の組織力が高いスウェーデンでさえ、2000年代に組織率が大きく低下している。ここで私は、労働組合は世界的にも時代に見合わない組織となりつつあるのか、それとも、組織率低下の要因は別にあるのかという疑問を持った。そこで、スウェーデンの組織率低下の要因を分析し、得られた結論から、日本の労働組合がとるべき対策、注力すべき活動が何かを考察したいと考えた。
 考察にあたっては、先行研究における組織率低下の要因をスウェーデンの労働環境と照らして検討した。具体的にはスウェーデンの組合員数データや関連文献、インタビューにより、先行研究の要因との関連性、新たな要因を分析した。その結果、政治的要因(政権交代による失業保険制度改革)が組織率低下に影響を及ぼしたことが明らかになった。
 失業保険制度は、スウェーデンの労働組合維持に重要な役割を果たす。このため、制度改変という政治的な動きが、組織基盤に影響を及ぼしたと考えられる。こうしたスウェーデンの事例をふまえ、政治的要因から日本の労働組合が悪影響を防止するため、特にどのような政策に注視すべきか言及する。そのうえで、労働組合における政治教育の重要性を改めて提言する。

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