『私の提言』

奨励賞

「連合には期待しかない」
~労働組合の進化のための提言~

川尻 史朗

≪労働組合組織を取り巻く課題≫

 今話題のAIに労働組合と取り巻く課題をたずねたところ、以下のような回答が出た。
 「まず、組織率の低下が挙げられます。日本の労働組合の組織率は18.2%であり、2002年段階と比較すると多くの国で低下傾向にあることが分かっています。また、非正規雇用者の増加により、労働組合の存在意義が問われるようになっています。さらに、企業別労働組合が圧倒的に多いため、業種や地域によっては労働組合が存在しない場合があり、労働者の権利保護が不十分な状況に陥ることがあります。また、企業との交渉において、労働組合側が妥協することが多く、労働者の要望が反映されないことがあるという課題もあります。」
 AIが示した課題は、誤った認識によるものも多いが、「組織率の低下」、「非正規労働者の増加」、「企業別組合中心」、「業種・地域への偏り」、「労使の力関係」など現在の労働組合運動のキーワードが浮かびあがる。これを私なりの理解で、整理すると

  1. ①労働者を守るはずの労働組合が、その機能不全に陥っており、目に見える結果が出せず、人気もなく、新たに仲間になる人が少ないため、絶滅の危機にある。
  2. ②未組織の正社員以外の労働者が多くなり、既存の労働組合では、守りきれない。
  3. ③未組織労働者が多い=権利保護できない労働者が圧倒的多数。
  4. ④すでに労働市場においてマイノリティとなっている既存の組合員のためだけの取り組みしかできない。

 それぞれの課題の詳細については、すでに先行研究において明らかになっていることもあるが、以下では、上記のような示された課題がなぜ起こっているのか、地方連合会の役職員という立場から、日常的な組合活動を通じて感じる原因について考えてみたい。

1.労働組合組織率低下の背景の検討

 労働組合の組織率は30年以上、低下し続けているが、その原因は何か。
 組織率としては、戦後間もない1948年に55.8%で全盛期であったと記録にあるが、活気があった時代の労働組合は、高度成長期やバブル期での恩恵を受け、春季生活闘争における賃金引上げ要求がベースアップ1万円を超え、企業がそれに満額で答えるという、直接的な「結果」が目に見えてわかりやすく出ていた。
 現在はどうか。バブル崩壊後、10年以上、日本経済は低迷していたが、その後10年は、ゆるやかな成長をし続け、業績が過去最高を記録する企業がでていたにもかかわらず、労働者の賃金は、まったく引き上がることはなかった。連合が春季生活闘争時に行っている「賃上げ集計結果」を見てみても、特に中小企業では、定昇相当分と言われている4,500円を上回ることがなかった。つまり、労働組合としての成果を、組合員や未組織労働者に見せることができなかった。
 もう一つの要因として、終身雇用制度の有名無実化がある。日本型雇用の特徴として機能してきた「終身雇用制度」が終焉を迎えているため、労働組合最大の存在意義・役割である「雇用維持・確保」そのものが、すでに機能を果たしていない。それどころか、働き方の多様化が進むにつれて、離職して別の企業に転職する若者が増え続けている。つまり労働者のニーズとしても、「終身雇用」は不要になってきている。
 また、働き方の多様化といえば、その中心は、いわゆる非正規労働者、派遣労働者の増加。単価が安く、雇用の調整弁として利用されやすい労働者がでてきたことによって、労働者が分断された。その結果、同じ企業内において、正規労働者で結成をしている労働組合の組合員と、雇用不安が付きまとう未加盟の非正規労働者が混在することとなり、労働組合は、正社員を守るためだけのものとして、認識されるようになったのではないだろうか。
 他方で2000年代以降、連合評価委員会の指摘もあり、連合の方針は、「すべての労働者のため」に向けられたものとなり、各組合は、パート労働者をはじめ、非正規労働者を組合員化する流れになったが、業種によって偏りがあり、根本的な解決がなされたわけではない。

 このような現実を見る限り、労働組合という組織が抱える課題や置かれている状況は、絶滅・消滅への歩みを進めていると言わざるを得ないが、ここで改めて声を大にして言いたい。
 弱い立場にある労働者が、絶対的強者の立場にある使用者に対し、意見をいったり、要求をしたりできるのは、労働法という絶対的ルールに守られている労働組合しか存在しえない。
 そして、その機能である「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の権利は、昔から何一つ衰えることなく存在し続けているのである。つまり、「労働組合」機能そのものは衰えていないし、「労働組合」は、労働者にとってなくてはならない、重要な組織であることは変わらないのである。そのことについて、労働組合自体も、再度認識をする必要があるのではないだろうか。

2.労働組合の機能不全の要因と課題

 では、なぜうまくその機能を使い切れていないのか。その一つとして、労働者を取り巻く労働環境が、ある程度成熟してきたため、労働組合が交渉で勝ち取るといった成果や結果が、組合員が満足するものになりえていないからだと推測する。一番わかりやすいのが賃金の引き上げで、ベア500円を勝ち取っても、月額500円、年間6,000円(賞与除く)のUPくらいでは、称賛されることはほぼない。
 ここで問題なのは、小さく見えるベア500円の引上げが賞賛されないことであり、ここまでに至る過程と結果が、当たり前の状況ととらえられていることだと考える。
 このベア500円を勝ち取るうえで行使している権利は、①団結権と②団体交渉権であり、労働組合の機能をしっかりと使っていることになる。さらに言えば、ベアで勝ち取った金額を賃金制度として改訂することができれば、会社のルールそのものを変えることになり、そのルールも、労使協定として締結することになれば、法律を上回る絶対的ルールを確立することにもなる。
 つまり問題の本質は、未組織労働者である8割以上の労働者が、この機能のことをほとんど理解していないし、知らないことにある。労働組合に所属している組合員自体でさえも、この機能を当たり前だと考えているか、そもそも知らない人が、圧倒的に多いと推測する。
 もう一つは、組織形態の在り方が、限界にきていることも要因だと考える。前述したとおり、日本型終身雇用の終焉と、多様化する労働者のニーズには、従来型の企業別労働組合では対応しきれていないという側面がある。
 「雇用を守ること=労働組合の存在意義」は過去のものとなり、企業内であるからこそ、良く言えば経営に“理解”がある労働組合が増えていることも事実だといえる。
 既存の企業別労働組合が、本当の意味で組合員にとって必要とされる組織に変貌をとげることと、もう一方で、これから労働組合を組織するにあたり、多様な組織形態の在り方も模索することが、いま求められていることだと考える。

3.提言:連合が取り組むべきこと

 では、この問題を解決するためには、何をすべきだろうか。そのキーワードとして、大きく3つ提案したい。

(1)「知ってもらう」ことの重要性
(2)ゆるやかな人間関係の構築
(3)目に見える成果、組合活動によるメリットの再構築

 この3つを具体的に取り組むべき組織は、企業別組合ではなく、ナショナルセンターである連合である。
 連合だからこそやらなければならない、連合にしかやれないことだともいえる。そこで、以下では、労働組合が現在抱えている課題を解決するために、連合が取り組むべき具体的な内容を提言したい。

(1)「知ってもらう」ことの重要性

 労働組合という存在、役割、機能を徹底的に知ってもらうことが、最大の課題である。
取り組みとしては、①現組合員②未組織労働者③学生(小、中、高、大)と3つのターゲットに分けて、それぞれ提案する。

【提言①】「寄付講座」の拡大および「連合大学」の創設

 これは③の学生を対象とした提言となる。
 現在、大学との連携により「連合寄付講座」が、本部及びいくつかの地方連合会において実施されている。これは、大学の授業の一枠を活用し、大学生対象に「働くこととワークルール」などをテーマに、連合会長(地方連合会長)が講義をするものである。
 まずは、この寄付講座を全地方連合会で必須の取り組みと位置づけ、全国展開する。
これ自体は、すでに先行して実施している地方連合会の蓄積があり、それほど困難ではなく、容易にできることだろう。
 さらなる取り組みとしては、「教育の場」そのものを連合がつくることである。授業内容は、ワークルールはもとより、労働組合の役割や意義、労働組合づくりのスキルに至るまで幅広く、かつ労働(組合)に特化した教育を行う。
 具体的には、まだ社会に出ていない若者や求職者をターゲットにし、通信教育やWEBを使った講義、または勉強アプリのようなものを開発しても面白いと思うが、容易な形で授業を受講してもらう。さらに、連合が組織内役員向けに行っている「連合アカデミー」へ参加させるなどの連携も可能だろう。こうした工程を踏まえ、単位を取得してもらい、卒業資格を得るといった内容であれば、費用を莫大にかけず、導入することは困難でないと考える。
 若者を中心とした多くの人たちに、徹底した労働教育をする場をつくることで、労働組合に理解のある労働者と経営者が生まれることにつながる

【提言②】デモ行進のパレード(お祭り)化計画

 これは②の主に未組織労働者を対象とした提言である。
 連合は、春季生活闘争やメーデー、その他緊急運動を行う際に、デモ行進を実施している。都市部では、10,000人規模、地方では、300~500人規模の組合役員を動員して、シュプレヒコールなどしながら、世論に訴える活動として、一定の役割を担っている。
 ところが、実際はデモ行進を行う組合役員自身も、それを見る世論も、訴えている内容が心に残る、足を止めて訴えを聞くところまでの成果があるかといわれると十分とはいえない。
 本当の意味で心に響かせるためにはどのような取り組みが必要なのだろうか。
 そこで、デモ行進をパレード化するもしくは、祭り的なイベントに定着させ、組合員だけでなく、未組織労働者も含めて、目が留まるような取り組みにすることを提言したい。
 イメージとしては、地域でよく目にする「やぐらパレード」。やぐらを作ってそれを競ったり、コスプレなどで部隊をつくったりなど、方法はいろいろあるが、参加する産別が楽しく参加でき、さらにそれを見る側も楽しくみることができる行進を、地域を巻き込んで定着させる。結果として、毎年の祭りごとのようなイベント化をすることができれば、注目度も上がり、その中で世論に訴える社会問題や政治問題をテーマにして、連合ならではのパレードをつくることで、見る側も、やる側も、その訴えを聞くことになるだろう。

【提言③】連合による「居酒屋」経営

 ①の組合員と②未組織労働者の両方をターゲットにした提言である。
これは、連合が発信したことや様々な取り組みができる環境を、自ら作り出してしまえばいいのではという構想であるため、「居酒屋」にこだわることなく、「喫茶店」でも「カラオケ屋」でも「ホテル」でもなんでもよい。
 「居酒屋」経営を前提に考えると、連合という組織が活動の一環として「居酒屋」を経営する。連合に集う組合が懇親の場として使うこともできるが、当然未組織労働者も普通に使える。ただし、「居酒屋」内は、連合が作成するポスターやチラシが大量に置いてあり、時には、連合が推薦する議員がその中で演説を始めるなど、独自で経営しているからこそ、その空間を自由に活用することで、労働組合や労働団体の存在を、身近なものにしていく。
 まずは、1号店を本部で出し、テストケースを経た後、各地方連合会による全国展開を視野に入れる。経営方法についても、いろいろな方法が考えられる。
 例えば店そのものを運営する人は、組合OBを採用したり、連合の職員が担ってもいい。提言①で述べた「連合大学」の学生がバイトで行ってもおもしろい。店に組織拡大アドバイザーや労働相談アドバイザーを常駐させ、来るお客さんからの相談を受けることもできる。「居酒屋」経営の資金となる組合費を収める組合員には、組合員割引などを適用して、売上による利益については、メンバーシップに還元するなどの工夫もできるだろう。もちろん、経営に関わる課題もいくつかあると思うが、そこは仲間であるUAゼンセンなどには、居酒屋関連の労働組合がたくさんあり、そうしたプロからのアドバイスをいただきながら、一つずつクリアしていけるだろう。
 先に述べた通り、「居酒屋」に限らず、労働者(とその家族)が身近に活用する“場所(空間)”を自ら作り出し、運営して、活用の幅を広げることで、常時発信が可能になり、組合員、未組織労働者ともに労働組合をより身近にすることができるのではないだろうか。

(2)ゆるやかな人間関係の構築

 労働組合組織のこれからにとっての重要なキーワードの1つが「ゆるやかな人間関係」の構築だと考える。

【提言④】青年組織メンバーの拡充(増員)と集う機会の提供

 労働組合に所属する組合員は、すべて「労働者」という共通の位置づけのもとに関係している存在であり、ゆるやかな関係を構築することが可能である。ただ、今の時代、特に若い世代になればなるほど、人と深い繋がりを持つこと自体を望まない人が多くなってきており、この「ゆるやかな人間関係」こそが、価値のあるものになると推測する。
 特に、産業別組織や連合といった上部団体にいくにつれて、その「ゆるやかさ」は大きくなっていき、たまに行事や会議で顔を合わす関係に過ぎないが、「仲間」でもある。つまり、それほど気を遣う必要がなく、だけどいろいろなことを共有できる関係性は、労働組合活動を通じて生まれるものであり、魅力ある関係であるといえる。
 産業別組織や連合といった上部団体への活動への参加は、こうした「ゆるやかな関係性」をつくれる最大の取り組みであり、最大のメリットであることを改めて確認する必要がある。
 具体的な取り組みとしては、特にこれからの組合役員候補である世代をターゲットにし、各地方連合会にある青年委員会などの青年組織、産業別組織や単組における青年組織のメンバーを拡充する(対象人数の増)とともに、こうした仲間が集うことができる機会の提供を、どんどんと拡大していくことである。
 数年前までは、連合の主催によるユースフォーラムなどの全国の青年組織の代表が集う場や、ブロック単位で集まる機会があったが、現在、こうした取り組みはない。今やWEBを使って全国どこでもいつでもネットでつなぐことができる時代になったことを考えれば、定期的にオンラインによる交流の場を作ることで、若者はもちろん、育児中の役員なども参加しやすいだろう。そのうえで、年1~2回程度、リアルで会って懇親ができる機会をつくる。こうした青年層の交流機会は、これからの労働組合組織を担う人材の確保、労働組合活動の活性化において、重要な取り組みであると考える。

【提言⑤】新たな労働組合組織形態の研究及び構築

 もう一方で、さらに進めたいのが、これから労働組合を組織するにあたっての組織形態を模索することだ。
 課題で述べた通り、既存の企業別労働組合としての限界と労働者の多様なニーズを考えた時、新たな労働組合組織の在り方そのものを再構築し、労働者の選択肢を増やすことが求められている。
 具体的には、ドイツのような企業を超えて産業単位の労働組合組織であったり、職能別組合といわれるクラフトユニオンなど、企業を超えた横のつながりを重視した組織形態を作っていくことだ。連合が取り組んでいるフリーランスで働く人たちのための「Wor-Q」も、新たな試みとしては一歩だといえる。さらに、「連合静岡メイト」のように、WEB上のみの会員になってもらい、情報提供を受けられるといった、未組織労働者とのつながりを持つ形も、参考にすべきだろう。
 現行の企業別労働組合を否定するものではなく、その機能が発揮できる環境を追求し続けることも重要である。しかし、その一方で、これからの労働者、これからの社会の在り方とニーズを見据えた、別の労働組合の形を模索することも、やはり重要である。だからこそ、ナショナルセンターである連合が、労働組合という組織形態そのものの在り方を研究し、企業別労働組合とは別の形を具体的につくること、より多くの労働者が「仲間」としてつながることができるための「新しい労働組合」の形を作っていくことこそが、今率先して行うべき課題だと強く思う。

(3)目に見える成果、組合活動によるメリットの再構築

 今回の提言にあたり、一番強く勧めたいのが、組合員、未組織労働者がともに享受できるメリットの再構築である。
 労働組合がもたらす成果やメリットについては、とことん追求すべきだと考える。組合としての機能がもたらすメリットそのものについては、キーワードⅠの「知ってもらう」をベースにするとし、それ以外にしっかりとした形、目に見える形でメリットをつくりだすことで、組合員は組合活動に参加したい、未組織労働者が仲間になりたいと思わせるための具体的な提言をする。

【提言⑥】活動ポイント&参加ポイントの配布、活用=連合アプリの開発・配布

 連合(労働運動)の活動に貢献及び参加したことへの還元を形にする。
 イメージとしては、既存のポイントカード(TSUTAYAカードや、Pontaカード)のようなカードを連合独自でつくり、連合が主催する集会に参加した際に、ポイントを付与したり、組合の役員になった段階で、ポイントを付与するといった、労働組合運動に関わることでメリットとなる仕組みをつくる。
 そのポイントは、提言③の「居酒屋」でも使うことも出来るし、労働金庫やこくみん共済COOPと連携して活用できるような形をつくるなどのアイディアも複数考えられる。また、既存のポイント運用企業との連動などもできるのではないだろうか。ここで必要となるのが、連合ポイントを組合員が自分で簡単に管理できるアプリの開発である。

 連合独自のアプリ開発をし、連合加盟のすべての組合員にダウンロードしてもらうことができれば、連合ポイントの普及も早められるだろう。
 このアプリ開発と導入の目的は、当然組合員にメリットを付与することであり、感じてもらうことでもあるが、それ以上に、労働組合組織と労働組合員を直接的につなげること自体に最大のメリットがある。組合員でいるにも関わらず、自分たちの組合が何をやっているか知らない、加盟している産業別組織や連合といった上部団体のことなど、認識すらしていない。そうした組合員は、地方連合会の役職員としての肌感覚言えば、8割以上だと推測する。このことこそが、労働組合が絶滅危惧といわれる最大の要因であると考える。
 よって、連合だけでなく、産別、単組も、このアプリを通じて、組合員と直接的なつながりをつくることで、以下のようなことが可能になるだろう。

ア)組合員が労働組合組織の仲間であるという自覚を得る
イ)関わることで、ポイントによる還元(メリット)を得られる(提供できる)
ウ)連合運動(労働運動)への参加がしやすくなる
エ)連合や労働組合運動を知る一つのツールとなる(情報提供ツール)

 以上のように、このアプリの開発と導入は、これまで述べてきた(1)「知ってもらう」ことの重要性、(2)ゆるやかな人間関係の構築、(3)目に見える成果、組合活動によるメリットの再構築の「解決のための3つのキーワード」をすべて網羅することができる。

 このアプリの機能については、それこそアイディアは無限に出てくるだろう。各企業別組合単位で使える機能をその中に入れて、単組活動に活かせるようにもできたり、アンケート調査に活用したり、寄付活動にも使えるかもしれない。ただし、これは組合員一人ひとりと労働組合・団体がつながることができるツールであり、その点を重視した形で、機能を考えていく必要がある。
組合員個人による登録を求めた場合、個人情報は、いわゆるビックデータに該当するかもしれない。連合としての信頼を維持するためには、データの取り扱いをより慎重に進める必要があることは言うまでもない。
 ただ、このデータをうまく活用することができれば、情報をもとに、組合員としていくつか分類し、産別や地方連合会のサービスとの接続も考えられる。
 さらに、未組織労働者を会員として登録し、限定的ではあるが、そのアプリ機能を使えるようにすることができれば、提言⑤で述べた「ゆるやかな関係」を未組織労働者と作ることもできるため、組織拡大のツールとしても期待できる。

 最近、労働組合の周辺でも労働金庫やこくみん共済COOPでは、組合員が気軽に利用できる素晴らしいアプリが開発されている。それらを参考にすれば、導入自体のハードルはそれほど高くないだろう。あとは、そのアプリにどのような機能を付けて、どのように活用してもらうか、そして、将来的な機能拡張も含めた開発や、データをどのように管理し、活用するのかを検討すればよい。まずは、開発のためのプロジェクトをつくり、数年以内に運用できるよう、早急に進めることを強く提言する。

終わりに

 3つのキーワードに関する6つの提言をさせていただいた。
 提言に共通することは、労働組合という組織そのものの良さと今でも果たしている役割、機能をもう一度、組織内外含め、すべての労働者にどのように知ってもらうか、それと同時に、今の社会状況と労働者のニーズに応えるための、新しい役割と機能をどう創り出していくかがポイントとなる。
 労働組合界という、独特の世界の中で、旧態依然の状況から、新しい形へと変貌を遂げることができるかが鍵であり、そのためには、IOT、AIをはじめとした第4次産業革命をどう取り入れ活用していくのかが重要である。こうしたデジタル社会への流れに乗りながらも、労働組合の本質である「助け合い」「支え合い」、そして「ゆるやかな関係性」の価値を高め、発揮させられることこそ、連合が旗を振って進むべき道であると確信している。まずは、組合員の声、若い世代、そして未組織労働者の声を聞く場、議論する場をつくり、新しいことにチャレンジすることが、実現への第一歩となるだろう。働く人にとって「連合には期待しかない」と私は期待したい。


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